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コブやモーグルについて思ったことをダラダラとつづっています。
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吸収はモーグルにおいて最も大切な動作です。
吸収動作によって、トップの先落とし、衝撃の吸収などが可能になりますが、今回は吸収動作による前後のバランスの調整について説明してみたいと思います。


◆吸収により前後のバランスを保つことができる
これは、私がモーグルの初歩としてとても重要と考えているテクニックです。

まず、この滑り方の方法を簡単に説明します。

1. 滑っている時のバランスは、少し前傾オーバー気味を意識します。

2. その少し前傾オーバー気味のポジションで、コブに入ります。
少し前傾気味を意識

















3.
前傾オーバーなので、コブにぶつかると、ヒザの関節が伸びるように動こうとします。
ヒザの関節が伸びようとする


















4.
ここで、ヒザを伸ばしてしまうと、上体が前に突っ込んださらに前傾オーバーなポジションになってしまいます。そこで、ヒザを伸ばしてしまわずに、反対に自らヒザを曲げていきます。(この時、カカトをお尻に引き上げるような意識で、ヒザを曲げます)
ヒザを曲げると最適なポジションになる

















5.
そうすると、スキーに適度な前圧がかかり、コブの頂点をすぎると、自然とスキーのトップがコブの落ち込む形にそって下がります。
上体も前傾気味なので、後傾にならずにコブの落ち込む角度に合わせることができます。


このようにヒザを曲げる動作を行うことで、最適なセンター(中間) ポジションから少し前傾オーバーまでのポジションであれば、前後のバランスを崩さずに滑ることができます。


これだけの説明では、いまひとつよくわかりませんよね・・・。

ではこれから、どのようなメカニズムで前後のバランスがとれるようになるのか、詳しく説明していこうと思います。


少々長くなりますが、順を追って見ていきましょう。



◆後傾/前傾オーバーを最小限に抑えるには
まず、コブを滑っていて一番多いミスは何でしょう?
それは、やっぱり後傾ですよね。

後傾を直すためには、前傾することを意識するのですが、勢いあまって前傾オーバーでコブに入ってしまうと後傾以上に痛いクラッシュにつながります。

後傾の場合はスキーがスッポ抜けてコブのラインからアウトしてしまうか、悪くても背中を打つ程度かと思います。
前傾オーバーの場合はコブにぶつかった衝撃で潰されるくらいならいいですが、スキーのトップがコブに刺ささってでんぐり返しなんて悲劇は、想像しただけで恐ろしくなりますね。

でも、「この恐怖心を克服してこそ上達がある」と自分に言い聞かせています。
前後のバランスはモーグルで一番重要なポイントで、モーグルの永遠の課題と言って良いのではないかと思います。


◆なぜモーグルでは前後のバランスが大切なのか?
では、なぜモーグルでは前後のバランスが特に重要になるのでしょうか?

まず、一般的な基礎のコブの滑り方を考えてみましょう。
基礎のコブの滑り方は、コブの外側からスキーを回しこんでS字を描くように滑ります。
そのため、前後のバランスのみならず、左右のバランスをとっていく事も重要になります。

それに比べて、モーグルはどうでしょうか。
モーグルは直線的にコブを滑走するため、左右のバランスをとる必要性は少なくなり、前後のバランスにフォーカスして滑ることになります。

この点では、前後左右のバランスを気にして滑る基礎の滑りより、前後のバランスみを気にするモーグルの方がシンプルな動作だと言えるかもしれません。



◆最適な前後のバランスは?
では、どのようにして適切な前後のバランスが分かるようになるのでしょうか?
こればっかりは 「経験を積むしかない」 としか言いようがありません。

スピード、斜度、雪質などの様々な要因が複雑に絡み合って、最適な前後のバランスが割り出されます。
特にコブ斜面はコブの形状が千差万別なため、厳密には1コブ1コブごとに、前後のバランスが変わってきます。実際には、複数のコブの全体の流れで前後のバランスが決まります。

一流モーグラーは「豊富な経験」により、瞬時にこれらのたくさんの情報を解析し、ベストな前後のバランスを察知できます。
でも、コブ斜面の滑走経験が少ないスキーヤーは、なかなか適切な前後のバランスがわかりません。


◆前後のバランスを調整する方法
上記で、前後のバランスが分かるようになるには、「経験を積むしかない」と言いました。
でも、前後のバランスが多少ずれていても、それを調整できる方法があります。
それが、今回紹介している吸収動作で調整する方法です


コブを吸収するときに、カカトをお尻に引き上げるようにして吸収動作を行います。
こうすることにより、スキーの加重する位置の前後のスイートスポットが広くなるのです。


◆スキーのスイートスポットとは?
スイートスポットとは、野球にたとえるとバットの「芯」です。

ボールを打つときに、ボールをバットの芯でとらえると、少ない力で「カキーン」とボールは遠くまで飛んでいきます。

テニスも同様で、ラケットの中心(実際は真ん中より少し先)でボールを打つと、「パコーン」と気持ちよくボールが飛んでいきます。

スキーの場合、この「スイートスポット」は加重する位置とお考えください。
スキーのセンターに加重すると、スキーはたわみ、サイドカーブに沿って気持ちよくターンします。

スイートスポットを外して、後ろ側に加重すると、すっぽ抜けて直線的にスキーが走って後傾になってしまいます。
前側にスイートスポットを外すと、上体が前につっこみ、スキーが詰まって滑らかに走りません。

野球もテニスもスキーも、スイートスポットを捉えると、力をあまり使わずに、気持ちよく打ったり滑ったりできます。


◆モーグルの場合のスイートスポット
モーグルの場合も同様に、スイートスポットに適切に加重することにより、水がコブ斜面を流れ落ちるように、なめらかに滑ることができるようになります。

しかし、スイートスポットを外してしまうと、バランスを保つのに余計な筋力が必要になります。
後ろにスイートスポットを外すと、腹筋で上体を前に引き戻しさなくてはなりません。
また、前にスイートスポットを外した場合は、コブにぶつかった衝撃で、前にガクンとつぶれる上体を、背筋でたてなおさなくてはなりません。

実際はコブ斜面は凹凸が激しいので、とてもシビアな前後のバランスが要求されます。
それは、ちょっとした後傾オーバーや前傾オーバーが、コブにより助長されてしまい、バランスを大きく崩してしまうからです。
つまり、コブではスキーのとても狭いスイートスポットに加重しなくてはならないということです。



◆スイートスポットを広げる方法
今回ご紹介しているのが、このスイートスポットを広げるテクニックです。

このテクニックでは、まずポジションを少し前にすることを意識して滑ります。(= 少し前傾オーバーのポジション)
次に、コブに当たったときにカカトをお尻に引き上げる吸収動作を行います。
コブの受ける部分に当たった瞬間にカカトをお尻に引き上げると、スキーが前につまってしまうので、私はコブの受ける部分を8割位上がった部分で、このヒザを曲げる動作を入れるようにしています。
この動作で、前傾のポジションをニュートラル(中間)に戻すことができます。

どうして前傾オーバーでカカトをお尻に引き上げる吸収を行うと前後のバランスがとれるのか?
いい加減に、長い説明でうんざりされているかと思いますが、ここからが核心なので、もう少しおつきあいください。


後傾でコプに入っていった場合
後傾でコプに当たった場合、スキーが前にすっぽ抜けてしまいます。

カカトから腹筋に続くラインの筋肉でふんばり、上体を前に戻すようにします。

ここで吸収動作を行うと、さらに後傾になってしまいます。
特に、ヒザを胸につけるような形で吸収動作を行ってしまうと、お尻が後ろに落ちてしまい、さらに大きく後傾してしまいます。
後傾になると吸収動作では調整できないので、後傾にはならないように注意しましょう。


前傾オーバーでコブに入っていった場合
前傾オーバーでコブにぶつかると、ガクンと上体が前に倒れます。
このとき、ヒザの関節はどのように動くでしょうか?

普通であれば、上体が前につぶれるのに伴い、ヒザが伸びるように動きます
これは、ヒザを曲げる吸収動作とは逆の動きになりますよね。
また、ヒザが伸びてしまうことにより、さらに上体が前のめりになってしまいます。

では、ヒザが伸びてしまわないようにするにはどうしたら良いでしょう?
それは、コブに当たったときに、ヒザが伸びるのと逆の動きをすればいいのです。
つまりヒザを曲げていけばいいのです



具体的に言うと、ヒザを曲げてカカトをお尻に引きつけるような吸収動作です。
この動作を行うことにより、前傾オーバー気味でコブに入っても、コブに当たった衝撃でヒザが伸びてしまうことがなくなります。


この滑りをイメージしてみましょう。

1.  前傾オーバーとまではいかないまでも、少し前傾気味を意識してコプに入ります。
前傾気味を意識する
















2. 
コブに当たったとき、上記で説明したように、上体が前につぶれるのに合わせて、ヒザの角度が伸びるように動こうとします。
ここでカカトをお尻に引き上げるように曲げます。
ヒザが伸びようとする

















3. 
するとスキーはどのように動くでしょうか?
前傾気味なので、スキーには前圧がかかっています。
カカトをお尻に引き上げる吸収により、スキーのテールが上がり、トップが下がります。
ヒザを曲げると最適なポジションになる

















コブの頂点を越えたスキーは、この動作により、自然とコブの裏の落ち込む斜度に沿ってトップが下がります。
スキーは理想的な動きとなり、前傾オーバーも解消されます。


要約すると、コブに当たった際に伸びようとするヒザを、逆に曲げることにより、上体が前のめりになるのを防ぎ、前傾オーバーを最適なポジションに戻すことができます。


理想を言えば前傾でも後傾でもない、ちょうど良いセンターのポジションが一番良いのです。
ですが、その絶妙なポジションをとるのが難しいからこそ、このテクニックを使って前後のポジションを適正な状態へともっていくのです。

この吸収動作による前後のバランスの調整を行わなければ、前後のバランスは非常にシビアになります。
また、スキーに加重するスイートスポットもとても狭くなります。

ですが、吸収動作を行うことにより、前後のバランスが多少前にずれていても、最適な前後のバランスに調整できるようになります。
つまり、スキーに加重するスイートスポットの範囲が広くなります



◆このテクニックでヒザを曲げすぎるのはX
さて、前傾オーバーの度合いが大きければ大きいほど、それを調節するために大きな吸収動作でポジションを調整する必要があります。

この調整に大きくヒザを曲げる動作を使ってしまうと、コブの衝撃をやわらげるための吸収動作で使うヒザを曲げるストロークが少なくなってしまいます。

また、吸収動作が大きすぎると、お尻が後ろに下がってしまい、どうしても後傾になりがちです。
ですので、できるかぎり前傾オーバーは少なくし、前傾オーバーを調整するのに必要な吸収動作(= ヒザを曲げる動作)を少なくし、コブの衝撃を吸収するためのヒザを曲げるストロークをとっておくのがベターです。

感じとしては、コブにぶつかった瞬間に、少しだけヒザの関節を曲げて吸収動作を促す程度が良いと思います。

◆常にベストなポジションをとるのは難しい
確かに前傾オーバーでも後傾オーバーでもない、最適な中間のポジションがとれれば、それがベストです。
ですが、それが難しいので、少し前傾気味のポジションを意識し、前傾オーバーになった分はヒザの運動により調整するのが、このテクニックの意図するところです。
後傾は筋力でしかカバーできないが、前傾オーバーはテクニックでカバーできるということです。


◆結論
この吸収動作のテクニックを使うことによって、多少の前傾オーバーであれば問題なくコブをクリアできるようなります。
吸収動作を使わない場合は、前傾でも後傾でもない中間のベストポジションを常にキープする必要がありますが、吸収動作を使うことにより、多少の前傾オーバーから中間のベスト ポジションまではスイートスポットにはまった滑りにすることができます。


今回のまとめ:
前後のバランスは少し前傾気味のポジションを意識し、コブに当たったときにカカトをお尻に引き上げて吸収し、前後のバランスをニュートラル(中間)にする。このテクニックを使うことにより、前後のバランスが調整できる。


おわり


◆目次はこちら







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目次
INDEX

下の各項目からもご覧いただけます
コブの滑り方
■ 脚は少し曲げておく
■ 目線は重要
■ かかと加重を重視
■ スタンスと前後差
■ 基礎スキーヤーがモーグル的に滑るには
■ 吸収動作を長くキープ
■ モーグルのストックワーク (1)
■ モーグルのストックワーク (2)
■ モーグルのストックワーク (3)
■ スイッチバック
■ 背筋を伸ばす
■ 秘技!! スライド&ジャンプ
■ 吸収動作が必要なわけ
■ 吸収動作によるスピードアップ
■ 1つの動作で吸収と先落としをする
■ 吸収はヒザを意識する
■ 吸収動作による前後のバランスの調整
■ 吸収を行わない滑り方
■ 肩の逆ローテーション
■ ダブルストック
■ 縦の溝コブで減速
■ コブの溝でスキーをたわませる
■スキーの先落としと関節の動き
■吸収と伸ばしのタイミング
■ 足首の角度とポジションの関係
■ 左右非対称のコブとスライド
■ レベルによるストックワークの違い
■ スキーの先落しの角度とスピードコントロール
■ 静かなストックワーク
■ ボール状の凹みを通るライン
■ 外側の肩を下げる動きについて
■ スキーの縦の動きと練習について
■ コブ初心者 (1) どこを通る?
■ コブ初心者 (2) フォールライン方向にずらす
■ コブ初心者 (3) 上体をフォールライン方向にキープ
■ コブ初心者 (4) 脚のかまえ
■ コブ初心者 (5) それではコブを滑ってみよう・前編
■ コブ初心者 (6) それではコブを滑ってみよう・後編
■ コブ初心者 (7) スキー板と練習するコブ斜面
■ 春の巨大コブを省エネで滑る方法
■ 滑り方によって変化する谷回りと山回り
■ コブ中級者への道 (1) プロペラと逆ひねり
■ コブでおじぎを防ぐには
■ コブ中級者への道 (2) スライドする方向を変える
■ コブ中級者への道 (3) コブでスキーが開いちゃう
■ 上体を前に移動させる
■ コブ頂点のポジション
■ 基本ポジション
■ コブの滑り方で変わる前傾角度
■ 腰と下っ腹の意識
■ 先落としにトライしてみよう Part 1
■ 先落としにトライしてみよう Part 2
■ コブの衝撃に強いポジション Part 1
■ コブの衝撃に強いポジション Part 2
■ 腕の構え
■ コブで動きを止めない滑り Part1
■ コブで動きを止めない滑り Part2
■ ストックワークと腕の動き
■ コブに乗り上げていくところの脚の動き
■ コブを片足で滑ってみる
■ 重心とスキーの回転
■ パウダーとコブの共通点 Part 1
■ パウダーとコブの共通点 Part 2
■ スキーのたわみでコブから受ける衝撃をやわらげる
■ 負の連鎖 Part 1
■ 負の連鎖 Part 2
■ 負の連鎖 Part 3
■ 負の連鎖 Part 4
■ テールジャンプ Part 1
■ テールジャンプ Part 2
■ テールジャンプ Part 3
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