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コブやモーグルについて思ったことをダラダラとつづっています。
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さてさて、「コブ中級者への道」第2回目です。 
今回は、コブの裏でスライドする方向を変えていくことについて考えてみましょう。

コブ初級者の多くは、コブの頂点でクルッとスキーを回し、コブの裏でスキーを下にずらして減速する滑り方をしているかと思います。
いわゆるズルドンと呼ばれている滑り方ですね。


この滑り方のコツやベースになる部分は大きく変えずに、そこからターンの質を少しずつ上げていってみよう、というのが今回の趣旨です。

コブの頂点でクルッとスキーを回し、コブの裏でスキーをずらして減速する滑り方では、スキーを斜面の下方向、つまりフォールライン方向へずらしていましたが、これをターン外側へ斜めにスライドしてみます。





斜めにスライドすることができるようになったら、次の段階ではターン外側の横方向へスライドすることにもチャレンジしてみましょう。





このように、コブの裏で斜めや横にスライドするためには、ターンのタイミングや前後左右のバランスなどが難しくなります。
でも、これが安定してできるようになれば、かなり上達したことを実感できるのではないかと思います。





◆斜め外側へスライドしてみよう
まず、コブの裏の落ち込む部分でスキーを斜め外側へスライドさせる滑り方から見ていきましょう。



多くのコブ初級者のかたは、コブの裏で斜面下方向(フォールライン方向)へスキーをスライドさせているかと思います。
(※初心者がスキーをフォールライン方向へスライドさせる方法については「初心者がコブを完走できるようになるには (その2)」のページをご参照ください)



ここで、スキーをフォールライン方向へスライドさせていたのを、少しずつ外側へスライドさていってみましょう。


最終的にはターン外側に斜め45度くらいの角度でスライドできるようになれば、かなりコブ滑走のレベルが上がったことを実感できるのではないかと思います。

下方向へずらしていた滑りから一皮むけた滑りに進化するので、一緒に滑っている人たちから「コブの滑り、変わったねぇ~」みたいに驚かれるかもしれません。

また、見かけだけではなく、コブの形状に逆らわない滑り方になり、よりコブに調和している感覚を得られやすいのではないかと思います。


●多くのコブに調和した滑り方
コブは滑ったスキーヤーの滑り方によって、ピッチや形が決まり成形されていきます。
そして、できたコブはそれを作ったスキーヤーの滑り方に合った形のコブになります。

たとえば、多くのモーグラーが滑ってできたコブは縦の溝コブになり、縦に滑るモーグルの滑り方に適したコブになります。
このような形のコブでは、スキーを横に振って減速する滑り方を受け付けない排他的なラインになります。

いっぽう、多くの基礎スキーヤーが左右のスペースと落差をとったショートターンを繰り返すと、バンクターンに適したコブのラインができあがります。
この場合は、モーグルのように縦に滑る滑り方には向いていない形のコブになります。
そのコブのラインを、1人のモーグラーが縦に滑っていたとしても、多くのスキーヤーはバンクターンで滑るため、バンクターン優位の形のコブが保持されます。

このように、コブには「数的優位な滑り方に適した形になっていく」という傾向があります。

では、コブを滑るスキーヤーで最も数的優位な滑り方は、どのような滑り方でしょうか?
最も多い滑り方は、適度に左右のスペースをとってスライドする滑り方ではないかと思います。
そのため、多くのコブは「適度に左右のスペースをとってスライドする滑り方」に適したコブのラインになります。

で、ここで何が言いたいのかと言うと、今回のトピックの斜め外側へスライドする滑り方は、最も一般的なコブの滑り方である適度に左右のスペースをとってスライドする滑り方に合致しているということです。

そのため、斜め外側へスライドする滑り方は、スキー場にある多くのコブのラインに適した滑り方になる確率が高い、凡庸性がある滑り方ではないかと思います。

また、コブの落ち込む部分の角度は、だいたい斜め外側へ傾斜しています。

つまり、コブの裏でスキーを斜め外側へスライドすることは、斜め外側へ傾斜しているコブの落ち込む部分の角度にさからわず、調和しているスキー操作になります。




●滑り方
では、斜め外側へスライドする滑りの、全体の流れを見てみましょう。

1. コブの頂点に乗り上げたら、スキーを回し始めます。
このとき、コブの頂点でクルッと早くスキーを回してしまうのではなく、ゆっくりと回していきます。


2. スキーをターン外側へスライドしていきます。
スキーを回しこむ角度は溝やコブの受ける部分の角度に合わせるようにします。



3. スキーが溝に落ち、コブに乗り上げていきます。
コブの受ける部分は斜め内側に傾いているため、自然とターン内側へスキーが進んで行きます。



つまりこの滑り方では、コブの落ち込む部分ではターン外側へ進み、コブに乗り上げる部分ではターン内側へ進む滑り方になります。




4. コブに乗り上げたら、次のターンに入ります。


以後、上記の繰り返しになります。



●外側にスキーをスライドさせる滑りのポイント
外側に斜めにスキーをスライドさせる滑り方では、ズルドンの滑り方に比べて横の移動スペースを取った滑りになります。
そのため、前後のバランスに加え、左右(横)のバランスにも気を配る必要があり、難易度は高くなります。

コブを滑る技術の全体的な底上げが必要になってくるのですが、ここでは特に注意すべき点をいくつか挙げてみたいと思います。

-上体をフォールライン方向へキープ
-上体は立てたまま(内側に倒さない)
-後傾にならないようにする
-スキーをゆっくり回す

それほど目新しいものはあまりありませんね。
普段から意識すべきことをより確実に行うという感じになります。

では、上から順に見ていきましょう。

上体をフォールライン方向へキープ
コブを少しでも滑ることができるスキーヤーであれば、ほとんどのかたが意識している最もベーシックな点だと思います。
ただ、これがしっかりと身についていなくて、ローテーションしてしまうクセがまだ残っていると、斜め外側にスキーをスライドしていくことが難しくなります。

上体がローテーションした体勢で斜め外側にスキーをずらしていくシーンを考えてみましょう。


上体がターン内側に向いているのに対して、スキーは外側へ進んで行きます。
つまり、体は内側に向いているのに、スキーの進行方向は斜め後ろ方向へバックしていることになります。

後ろに進んで行ってしまうと恐怖心がでてくるので、それを避けようとする自然のリアクションで、重心を前の方に移動させてしまいます。
その結果、スキーの加重位置はスキーのトップ寄りになります。


こうなると、テール側の加重が軽くなり、ずらして雪面を削る力が弱くなって、十分に減速できなくなってしまいます。

ここで、ローテーションせずにスキーと体のひねりがしっかりできていれば、斜め外側にスキーをスライドさせる際にもしっかり加重し、強くずらして減速することができます。



その他の欠点としては、ローテーションしてしまうと重心を斜面下方向へ移動させることが難しくなり、コブに乗り上げたところで重心がまだ後ろ(ターン内側)に残ってしまいがちです。
こうなると、次のターンに入れずにコブのラインからはじき出されてしまいます。




上体は立てたまま(内側に倒さない)
整地で深く切り込んでターンし、横の移動スペースを取った滑り方では、体の軸を倒した体勢になります。


また、コブでも外側のバンクを通るライン取りでは、ある程度軸を内側に倒した滑り方になります。


いっぽう、コブでスキーを外側へスライドさせていく滑り方では、横への移動スペースをとった滑り方になるのですが、ここでは上体はターン内側へは倒さずに立てたままキープして滑ることをお勧めします。



整地でエッジを噛ませてカービングしていく滑り方や、コブのバンクターンでは、雪面やバンクから受ける圧力や遠心力に対してつり合いが取れるよう、体の軸を内側に倒す必要があります。

いっぽう、コブで斜め外側へスライドさせる滑り方では、スキーがずれていくため、それほど大きな圧力や遠心力は受けません。
そのため、整地やバンクターンのように体の軸を内側に倒すと、内側にバランスを崩してしまうことが多くなってしまいます。



斜め外側にずらす滑り方では、スキーは体の下より外側へ出ているのですが、上体は内側に倒さずに立てたままの状態をキープするよう心がけましょう。


イメージとしては、上体は立てたままスキーのズレに乗っていく感じになります。



後傾にならないようにする
コブを滑っているときに後傾にならないようにすることは、ほとんどのかたが意識しているポイントだと思いますが、斜め外側へスキーをスライドさせる滑り方では、後傾にならない意識がよりいっそう大切になります。

フォールライン方向へスライドさせる滑り方の場合は、横の移動スペースが少ない縦のライン取りになります。
そのため、常に下方向へ進んで行く慣性が働いています。
結果的に、ターンの切りかえで多少後傾であっても、次のターンに入れてしまいます。


いっぽう、斜め外側へスライドさせる滑り方では横に移動するスペースがあるので、横方向へ進む慣性が働いています。


そのため、後傾になりコブの出口(頂点)の部分でまだ重心が山側(ターン内側)に残っている体勢だと、切りかえで次のターンに入ることができなくて、コブのラインから飛び出てしまいます。



また、斜め外側へスライドする滑り方では、コブの溝に落ちた瞬間に、スキーがターン内側へ急に走ってしまうことが多くなります。
ここで、後傾の状態で急にスキーが横に走ると、スキーがすっぽ抜けて飛ばされてしまったり、転んでしまったりする場合があります。


このような失敗を防ぐために、横に移動するスペースを取った滑り方では後傾にならないよう意識して滑ることが今まで以上に大切になります。



スキーをゆっくり回す
縦方向にずらす滑り方では、コブの頂点でクルッとスキーを回していましたが、斜め外側にずらす滑り方ではコブの頂点を過ぎたあたりからゆっくりとスキーを回していくことをお勧めします。


コブが苦手だった初心者の頃は、スキーを早く横に向けて減速しようとするため、コブの頂点でスキーをクルッと回しているケースが多かったのではないかと思います。
でも、ある程度コブを滑れるようになってくると、慣れて少し余裕がでてきます。
そうなると、急いでスキーを横に回す必要はなくなってきます。

また、スキーを早くクルッと回そうとすると、左右の板が重なってしまったり、テールが後ろの斜面に引っかかったりしてしまうことがありますが、ゆっくり回せばそのような失敗はほとんどなくなります。

さらに、スキーをゆっくり回すことで、ターンの質が高くなります。
ターンの質と言うと、ちょっとあいまいな表現になりますが、スキーの軌道が丸くなりはじめて見栄えが良くなります。
また、滑っているときの気持ちよさもアップします。

スキーをゆっくり回すほど、このターンの質は高くなっていきます。
スキーをどこまでゆっくり回せるかに挑戦してみるのも、おもしろい練習法になるのではないかと思います。


「斜め外側へスライドする滑り方」の説明は以上になります。



◆横方向にスライドしてみよう
斜め外側45度くらいにスキーをスライドして滑ることができるようになったら、今度は横にスキーをスライドさせることにチャレンジしてみましょう。




斜め外側へスライドする滑り方より、だいぶ難易度は高くなります。
また、ある程度コブの条件や形状によって向き不向きがある滑り方になります。
最初は、緩斜面の比較的簡単なコブで試してみることをお勧めします。


●滑り方
では、全体の流れをみてみましょう。

1. コブの頂点でターンに入ります。
ここでスキーを回そうとすると、スキーが回りすぎて横にスライドできなくなってしまいます。
そのため、コブの頂点では切り替えを行うだけで、スキーを回す意識はない方がいいのではないかと思います。


2. 横方向にずらしながらスキーを押し出していきます。


前述の「斜めにスライドさせる滑り方」ではスキーをある程度回しこんでスライドさせますが、「横にスライドさせる滑り方」ではスキーは回しこまずに横方向へ押し出します。
コブにスキーが当たる段階ではスキーがフォールラインに向いているくらいの状態になります。


3. スキーがコブに当たります。
この部分では自ら脚を伸ばしてスキーのソールをコブに押し当てていく意識をもつといいかと思います。

コブに当たる位置は、落ち込む部分と受ける部分の境目の溝が縦から横へ向きを変えてカーブしているあたりをねらって、スキーを押し当てる感じになります。
コブの形によって違ってくる場合もありますが、コブの受ける面が丸く凹んだ部分にスキーのソールのセンター部分(ブーツのソール部分)を押し当てていきます。


この凹んだ部分にスキーを押し当てると、スキーのたわみが感じられ、しっかりとした足場ができます。


4. コブの受ける部分の面に添って、スキーが内側にターンしていきます。


コブの頂点に達したら、また上記の1からの繰り返しになります。


ライン取りとしては別記事の「ボール状の凹みを通るライン」に近くなります。
今回の滑り方では、このボール状の凹みにスキーのトップから入るのではなく、スキーのソール面のセンター部分をずらして押し当てる滑り方になります。




●横にスキーをスライドさせる滑り方のポイント
前述した「斜めにスキーをスライドさせる滑り方」の注意点に追加して、以下の点を意識してみることをお勧めします。

- 低い姿勢をキープ
- 脚をゆっくり伸ばす

では、上から順に見てみましょう。


低い姿勢をキープ
コブの頂点を越えてスライドしていくときに高い姿勢になってしまうと、横方向へ脚を伸ばしていくことが難しくなってしまいます。


ここでは、コブの頂点で脚を曲げた低い姿勢のまま切りかえます。
そしてスライドしていく際は、低い姿勢のその腰の高さを保ったまま横方向へ脚を伸ばしていきます。


これにより、横方向へ脚を伸ばすストロークを大きく取ることができます。
結果的に、スキーをずらす量やライン取りの調整範囲が広がります。



脚をゆっくり伸ばす
もう1つのポイントは、脚をゆっくりと伸ばすことを意識してみるといいのではないかと思います。
これはコブのラインや状況によって変わってきますが、切り替え後に脚を横にいっきに伸ばしてしまうと、足場がなくなって内側にバランスを崩してしまう場合があります。


ここで、脚を伸ばしたときにスキーがコブの受ける面に当たれば、足場を確保できてバランスを崩さずに滑ることができるのですが、


コブに当たる前に脚を早く伸ばしきってしまうと、足場がなくなってバランスを崩してしまいます。

滑るときのイメージとしては、切り替え後にスキーを横方向へスライドさせる際、脚をゆっくりと伸ばして雪面抵抗を探りながらバランスを取っていくような感じになります。


そして、コブの側面の丸く凹んだ部分に達したところで、スキーのソール面をグッと押し当てるように脚を伸ばします。


脚を早く伸ばしてしまい、伸びきった状態でコブが丸く凹んだ部分にスキーが入ると、スキーがたわんだ反動でバランスを崩したり、すっぽ抜けてしまったりする場合があります。



ここで、早く脚をのばしきるのではなく、ある程度曲げた状態を保ちます。
そして、溝で脚を伸ばしてスキーを凹んだ部分に押し当てていくと、スキーのたわみの反動を受けてもバランスを崩しにくくなります。


こうすることで、スライド時に足場を失わず、コブにスキーのソール面が当たった時にしっかりとした足場ができ、安定した滑りにつながります。



「横方向へスライドする滑り方」の説明は以上になります。
この滑り方は、初級者にとってはかなり難易度の高い滑りとなりますが、上達したときの将来的な目標の1つとして覚えておいてもいいのではないかと思います。





以前、このブログの読者のかたから「基礎スキーの検定ではどのようなコブの滑り方がおすすめですか?」のような内容のご質問を受けたのですが、私自身、検定については全くわからないので、満足いくようなお返事はできなかったように思います。
ただ、今回の内容は基礎スキーの検定にも通じるところがあるのかな、と思ったので、ここからはご質問に対する追加のお返事も兼ねて、検定向けのコブの滑り方について書いてみようと思います。

コブ初級者のかたにとっては難しい滑り方になるので、「コブ中級者への道」の内容としてはふさわしくないかもしれません。
この点はあらかじめご了承ください。



◆検定向けの滑り方は?
最初に申し上げておきますと、実は私、基礎スキーの検定は1回も受けたことがありません。
「受けたことがない人に何がわかるの?」と思われた方、ごもっともです。
検定や基礎スキーに関してはなにぶん素人の見解になりますので、ご批判は謹んでお受けいたします。反論の余地はありません。
でも、ときどきスキー場のコブ斜面で基礎スキーの検定の場面を見かけることがあるので、そのとき思った検定向けのコブの滑り方について書いてみようと思います。

ただ、基礎スキーで求められている滑りはどのようなものなのか、最近のコブの滑り方のトレンドはどうなっているのか、また、どのランクでどれくらいのレベルの滑りを求められているのかなど、残念ながらほとんどわかりません。
そのため、かなり的外れな見解になってしまうかもしれません。
1人のヘタッピモーグラーからはどのように見えているのか、というだけなので、もしお時間があれば軽い気持ちで読んでいただければと思います。



●ターンのクオリティ
まず、どのような滑り方が質の高いターンとして評価されるのか考えてみます。

以前、「コブの滑り方によって変化する谷回りと山回り」という記事を書いたのですが、そこに記載してあるとおり、以下の順にターンの質は高くなっていきます。
ターンの質: コブの出口でクルッと回し横ずれで減速するターン


   
ターンの質: コブでずらしながら回るスライド系ターン


    
ターンの質: コブでカービング系のターン



ただ、カービング系の滑り方は難しく、失敗してしまうリスクを伴います。

検定では暴走してしまったり、ラインからはずれてしまったりなどの大きな失敗は避けたいところです。
カービング系のシャープなターンをすれば、それが成功すれば良い点をもらえると思うのですが、そのぶん失敗してしまう可能性は高くなってしまいます。

そのため、簡単な条件のコブを除けばスライド系のターンで滑り下りる方法が、多くのかたにとって現実的な選択になるのではないでしょうか。



●検定員の視点
次に、滑りを採点する検定員の視点から考えてみましょう。

私がいままで見た限りでは、検定員は受験者が滑り下りてくるのを斜面の下から見上げて採点しています。(もし違う場合があったらごめんなさい)

そのため、斜面の下から見て上手く滑っているように見えることが大切になるのではないかと思います。

コブは凹凸しているため、見る角度によってはスキーの動きがコブの反対側になって見えない部分があります。
このスキーの動きが見えない部分は、滑っているスキーヤーをどこから見ているかによっても異なります。

例えば、斜面の上からスキーヤーの後姿を見下ろす場合、コブに乗り上げる部分のスキーの動きは見えるのですが、コブの頂点を越えた落ち込む部分の動きは見えません。





反対に、スキーヤーが滑り下りてくる姿を斜面の下から見上げる場合は、コブの頂点を越えたところのスキーの動きは見えるのですが、コブの溝と乗り上げる部分はコブの反対側になっていて見ることができません。




また、下から見上げる場合は、斜面が終わった所から離れた位置から見ると、コブの裏側になってスキーの動きが見えない部分はそれほど多くありません。


いっぽう、斜面が終わった所の近く、または斜面の中腹から見上げている場合は、コブの裏側になって見えていない部分が多くなります。





このように見えていない部分の多い少ないはありますが、基礎スキーの検定では検定員が受験者を下から見上げている形になるので、下から見て見栄えが良く、なおかつ失敗してしまうリスクが少ない滑り方を選択するといいのではないかと思います。

では、下から見て上手く見え、それでいて失敗するリスクが少ない滑り方とは、どのような滑り方でしょうか?


●下から見て上手く見える滑り方
コブを滑っているスキーヤーを斜面の下から見上げていると、コブの頂点から落ち込む部分のスキーの動きは見えるのですが、コブの溝や乗り上げる部分のスキーの動きは、コブの反対側になるので見ることができません。


つまり、コブの影になって見えていない部分については、検定員は受験者がどのようなスキー操作をしているのかを想像するしか手立てがありません。

この検定員から見えていない部分で、どのようなスキー操作を行えばターンの質が良く見え、それでいて失敗してしまうリスクを抑えられるでしょうか?
そのあたりを考慮してみると、スキーを回しこむタイミングを遅らせるスライドターンで滑るのが1つの有効な滑り方になるのではないかと思います。

スキーをゆっくりと回していくことで、下にいる検定員から見えているコブの頂点を越えて落ち込む部分は谷回りをしているように見え、そして、スキーをひねってずらしている部分は、コブの反対側になっていて見ることができません。

そのため、スライドターンで滑っていても、斜面の下から見上げると、スキーのトップからコブに乗り上げるカービング系のターンで滑っているように見えます。



●回すタイミングを遅らせるスライドターン
では一連の流れを見てみましょう。

1. コブの頂点を越えたところで、ゆっくりとスキーを回しはじめます。
スキーをすぐに回してしまわずに、回すタイミングを遅らせる意識を持つといいかと思います。


このコブの頂点で早くスキーを回してしまうと、ズルドンの滑り方に近くなってしまうので、ゆっくりと回していきましょう。
この部分は斜面の下から見ている検定員からスキーの動きが見えているので、悪い印象を与えてしまうのは避けたいところです。


2. コブの落ち込む部分では、脚を伸ばしていくタイミングを遅らせます。





脚を伸ばすタイミングを遅らせることで、溝に落ちる直前にスキーをひねって回す時に脚を伸ばすことができます。
ここで、脚を伸ばしながら雪面を削り、コブの溝を蹴ることで、強く減速することが可能になります。

また、脚を伸ばすタイミングを遅らせると、コブの頂点を越えたところで重心が上に浮かなくなり、滑っているシルエットがカービング系の滑りに近くなります。


3. スキーのトップが溝の底に触れる直前にスキーをひねって回します。
滑っているスピードやコブの形や大きさによっても変わってきますが、スキーをひねって回しはじめるのは、スキーのトップが溝の底からだいたい50cm位に近づいた辺りがいいのではないかと思います。


スキーを回しこむ角度は、溝の角度に合わせます。


このとき、回しこむのが遅れてスキーのトップからコブに乗り上げてしまうと、コブに弾かれてバランスを崩してしまいやすくなるので、気をつけましょう。


スキーを回しこみながら、ずらして雪面を削って減速します。
また、曲げていた脚を伸ばして溝の底を蹴ることで、さらに強く減速することができます。


ここでは脚は完全に伸ばしきらずに、最も伸ばしたところでも少し曲がっているくらいがちょうどいいのではないかと思います。


4. コブに乗り上げる局面では特別なことはありません。普通の滑り方でOKです。


コブの頂点に乗り上げたら、上記の1からのくりかえしになります。


スキーの軌道はこんな感じになります。




下から見ると
では、この滑りが斜面下から見上げるとどのように見えているのかを考えてみましょう。

コブの頂点を越えたところでスキーをゆっくりと回していくことで、スキーがフォールライン(下)に向いているところまでが見えます。


そして、コブの反対側にスキーが隠れて見えなくなり、次にスキーが見えるのはコブの頂点から抜け出たところです。


つまり、コブの反対側になって見えていない部分で、スキーのトップからコブに乗り上げるカービング系のターンを行っているのか、それとも、スキーをひねって溝に落ちるスライド系のターンで滑っているのかは、下から見ていて非常に判断しづらくなります。






また、斜面の下から見ていて、下のイラストのようにスキーのテールが回り始めているのが見えていたとしても、それがスキーをひねってスライドすることで回っているのか、それとも、スキーのトップがコブの受ける部分に当たることによって回り始めているのかを判断するのは、非常に困難になります。


カービング系のターンを行う場合は、スキーのトップからコブに当たるため、コブに弾かれたり、スキーがすっぽ抜けてしまったりするリスクが高くなります。
スライドターンで滑ることにより、このような失敗をしてしまうリスクを抑えることができます。

つまり、斜面下からはコブの反対側になって見えていない部分では、スキーをひねってずらすことで、より安定した滑りになるのではないかと思います。



●斜め外側へスライドする
今回の「コブ中級者への道」のトピックである斜め外側へスライドする滑り方も取り入れてみると、さらにターン孤を描いて滑っているように見えるのではないかと思います。
つまり、に滑るのではなく、ある程度のスペースを取った滑り方になります。

では、フォールライン方向へスライドする縦のライン取りと、斜め外側へスライドする横のライン取りでは、斜面の下からどのように見えているのかを考えてみましょう。

まずはフォールライン(下)方向へスライドする縦のライン取りです。

あまりターン孤を描く滑りには見えませんね。


次に、斜め外側へスライドする滑り方を見てみましょう。


前の縦のライン取りと比べると、なんとなくターン孤を描いている滑りに見えないでしょうか?

縦と横のライン取りの同じ部分を切りとって比べてみると、実際のところスキーが向いている角度はほぼ同じになります。




では、なぜ斜め外側へスライドする滑り方ではターン孤を描いている滑りに見えるのでしょうか?
一因としては、横の移動スペースをとった滑りになるということもあるかもしれませんが、それよりも大きな要因は外側へスライドしている場面が谷回りをしているような印象を与えるからではないかと思います。

整地の滑りで考えてみましょう。
ターン前半の谷回りをしっかりとることで、ターン孤は作られます。


いっぽう、切りかえ直後にスキーを回してしまうと、ターン前半の谷回りがほとんど無くなってしまい、ターン孤が無い滑りになってしまいます。


つまり、谷回りがあるかどうか、および谷回りの時間と距離を十分にとれているかどうかが、ターン孤を描けているかどうかの1つの基準になります。

谷回りとは切りかえ後にスキーがフォールラインへ向くまでを指しますが、それと同時にターンの外側へ向かって進んでいる局面でもあります。



ではもう一回、コブで斜め外側へスライドする滑り方を見てみましょう。


このイラストの状態では、スキーの角度はフォールラインをほんの少しだけ越えています。
そのため、谷回りは終わっていて既に山回りに入りはじめていると言えるのかもしれません。

でも、スキーはターンの外側へ進んでいます。
スキーが溝の底に着地するまで外側へ進んでいるので、谷回りを長くとっているような錯覚を受けます。

このような印象になるため、斜め外側へスライドする滑り方はなんとなく谷回りをとった丸いターン孤を描いた滑りのように見えるのではないかと思います。


また、この滑り方ではコブの落ち込む部分でターン外側へ進み、コブに乗り上げる部分でターン内側へ進んでいます。
そのため、コブの落ち込む部分が谷回りで、コブの乗り上げる部分が山回りに見えるので、カービング系の滑り方と同じターン構成になります。
(※カービング系の滑り方のターン構成についてはこちらのページをご参照ください)

つまり、実際はスライドターンで滑っているのですが、ターン孤を描くカービング系の滑り方で滑っているような印象を与えることになります。


あともう1つ、斜め外側へスライドすることによりカービングっぽく見える理由があります。
それは、溝に落ちていく入射角と、コブの頂点からスキーが抜け出す出射角がほぼ同じになるからです。
では、この点について見てみましょう。


●縦のスライドではカービングターンに見えない
縦の滑走ラインで滑っている場合は、スキーを回すタイミングを遅らせてスライドしても、カービングで滑っているようには見えません。 (注:モーグルの縦溝コブを除く)

なぜなら、コブの頂点に乗り上げた時にスキーの角度がかなり横に向いてしまうため、溝に落ちる直前にスキーをひねって回していることが、下から見ている人にわかってしまうからです。


まず、縦のラインでカービングターンをする場合を考えてみましょう。


このように、縦に浅い角度でスキーを落とし込むと、コブの頂点からスキーが抜け出すときの角度も浅くなります。

いっぽう、横のスペースを取ってカービング系のターンで滑ると、コブから抜け出すスキーの角度も横向きになります。


このように、カービングターンではコブの落ち込む部分に入っていく入射角と、コブの受ける部分から抜け出す出射角がほぼ同じになるという性質があります。


次に、縦のライン取りで溝に入る直前にスキーをひねってスライドさせる場合を見てみましょう。


スライドターンでは、溝の角度に合わせてスキーを横に回します。
その結果、コブの頂点からスキーが抜け出す際にスキーが横に向く角度が大きくなります。(注:モーグルの縦溝コブを除く)

つまり、溝に落ち込む部分ではスキーを縦に落とし込んだように見えるのですが、いっぽうでコブから抜け出す部分ではスキーが横になっているという角度の違いが現れます。

このように、スキーをひねって回す部分はコブの裏側になって斜面の下からは見えていないのですが、コブから抜け出すときにスキーが横向きになっていることによって、ひねってずらしていることがばれてしまいます。


ではここで、スキーを斜め外側へスライドさせて横のスペースをとった滑り方の場合を考えてみましょう。
コブの落ち込む部分で外側へスライドすることによって、外側へ向かって溝に入ります。


そして、溝に落ちたスキーはコブの受けるところでターン内側に方向転換し、コブの頂点へ乗り上げます。


つまり、斜め横にコブに入って、斜め横にコブから出てくることになります。

結果的に、カービングと同じようにコブに対する入射角と出射角がほぼ一致することになり、カービング系のターンで滑っているように見えます。




ターンの質はけっこう高い
えーと、ここまでで「回すタイミングを遅らせるスライドターン=カービングターンもどきの滑り方」のような書き方になってしまったかもしれませんが、これは本意ではありません。

回すタイミングを遅らせるスライドターンは劣っている滑り方ではなく、スライドターンとしては質の高い滑り方になると思います。

コブ初級者にとってはちょっと難しいかもしれませんが、将来的に目指すべき1つの滑り方ではないでしょうか。
コブ中級以上のかたにとっては、難しい条件のコブで有効な滑り方ではないかと思います。

また、今回は滑りを採点する側からの視点で見栄えのいい滑り方を考えてみましたが、スキーは上手くなって効率的な動きができてくれば自然と見栄えのいい滑りになってきます。
ですので、普段の練習では自分の滑りが他人からどのように見えているのかはあまり意識する必要はないのかな、と思います。



コブに合った滑り方を選ぶほうが重要
ここでは基礎スキーの検定に向いた滑り方を考えてみましたが、これは単なる一例にすぎず、やっぱりコブはそのコブに合った滑り方で滑ることが一番大切ではないかと思います。

たとえば、残雪期のとけてぐちゃぐちゃの雪質であれば、スキーを回しこむスライドターンでは、深い溝にスキーが引っかかってしまって、かえって滑りづらくなってしまうことがあります。
そんなときは、縦にトップからコブに当てていく滑り方のほうが、安定して滑れる場合があります。

つまり、滑る前から滑り方を決めてしまうのではなく、実際に滑ってみて、その時のコブの形や雪質によってどのような滑り方が適しているかを考えていく方がいいのではないかと思います。

でも、実際のところは事前に何本か滑らなければ、そのコブに適した滑り方はなかなかわかりません。
検定の時は、そのようなインスペクションの時間を十分にとれない場合もあるのではないでしょうか。

また、スタート順が遅かったりしてインスペクション時から時間がたってしまうと、思っていたよりもずっとコブが掘れた状態になっているケースも考えられます。

そのため、実際に滑ってみないとコブの状態がわからない「ぶっつけ本番勝負」のことが多いのではないかと思います。
このような状況で、「どこまで攻めるか、どこまで守るか」を判断するのは非常にむずかしいということは、私のような検定未経験者でも想像できます。

そんなわけで、事前に作戦をたてても実際は作戦通りにはいかないことが多いのではないかと思います。

もともこもない結論になってしまいますが、その時のコブの状態に合わせて即興で滑りを変えていくことができる能力が、本当の実力と言えるのかもしれませんね。



おわり


◆目次はこちら
















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目次
INDEX

下の各項目からもご覧いただけます
コブの滑り方
■ 脚は少し曲げておく
■ 目線は重要
■ かかと加重を重視
■ スタンスと前後差
■ 基礎スキーヤーがモーグル的に滑るには
■ 吸収動作を長くキープ
■ モーグルのストックワーク (1)
■ モーグルのストックワーク (2)
■ モーグルのストックワーク (3)
■ スイッチバック
■ 背筋を伸ばす
■ 秘技!! スライド&ジャンプ
■ 吸収動作が必要なわけ
■ 吸収動作によるスピードアップ
■ 1つの動作で吸収と先落としをする
■ 吸収はヒザを意識する
■ 吸収動作による前後のバランスの調整
■ 吸収を行わない滑り方
■ 肩の逆ローテーション
■ ダブルストック
■ 縦の溝コブで減速
■ コブの溝でスキーをたわませる
■スキーの先落としと関節の動き
■吸収と伸ばしのタイミング
■ 足首の角度とポジションの関係
■ 左右非対称のコブとスライド
■ レベルによるストックワークの違い
■ スキーの先落しの角度とスピードコントロール
■ 静かなストックワーク
■ ボール状の凹みを通るライン
■ 外側の肩を下げる動きについて
■ スキーの縦の動きと練習について
■ コブ初心者 (1) どこを通る?
■ コブ初心者 (2) フォールライン方向にずらす
■ コブ初心者 (3) 上体をフォールライン方向にキープ
■ コブ初心者 (4) 脚のかまえ
■ コブ初心者 (5) それではコブを滑ってみよう・前編
■ コブ初心者 (6) それではコブを滑ってみよう・後編
■ コブ初心者 (7) スキー板と練習するコブ斜面
■ 春の巨大コブを省エネで滑る方法
■ 滑り方によって変化する谷回りと山回り
■ コブ中級者への道 (1) プロペラと逆ひねり
■ コブでおじぎを防ぐには
■ コブ中級者への道 (2) スライドする方向を変える
■ コブ中級者への道 (3) コブでスキーが開いちゃう
■ 上体を前に移動させる
■ コブ頂点のポジション
■ 基本ポジション
■ コブの滑り方で変わる前傾角度
■ 腰と下っ腹の意識
■ 先落としにトライしてみよう Part 1
■ 先落としにトライしてみよう Part 2
■ コブの衝撃に強いポジション Part 1
■ コブの衝撃に強いポジション Part 2
■ 腕の構え
■ コブで動きを止めない滑り Part1
■ コブで動きを止めない滑り Part2
■ ストックワークと腕の動き
■ コブに乗り上げていくところの脚の動き
■ コブを片足で滑ってみる
■ 重心とスキーの回転
■ パウダーとコブの共通点 Part 1
■ パウダーとコブの共通点 Part 2
■ スキーのたわみでコブから受ける衝撃をやわらげる
■ 負の連鎖 Part 1
■ 負の連鎖 Part 2
■ 負の連鎖 Part 3
■ 負の連鎖 Part 4
■ テールジャンプ Part 1
■ テールジャンプ Part 2
■ テールジャンプ Part 3
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