コブやモーグルについて思ったことをダラダラとつづっています。
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さてさて、今回は「コブを滑っているときの重心の位置と、スキーの回転方向の関係」というテーマについて考えてみますね。
スキーをしているとき、体の重心についてどんなことを考えていますか?
「いつも体が後ろに行っちゃうから、もっと前にしなきゃ」
とか
「重心が内側に入りすぎる傾向があるから、しっかりと外足に乗れるようにしなくちゃ」
みたいなことを意識しながら滑っていることが多いのではないでしょうか。
このように、理屈的なことを考えているというより、どちらかというと感覚的なところを重視しているのではないかと思います。
でも、スキー場から離れて、PCやスマホの画面を見ているこの時間は、滑っているときに感覚的に行っていることや無意識に行っていることに対して、それらが「どうしてそうなるのか」ということについて考えてみるのも悪くないかもしれません。
感覚的に行っているところを改めて考えてみて、その根拠がわかってくれば、行っている動作に対してもっと自信がもてるのではないでしょうか。
また、コブの形や雪質などの条件の違いによって、いつもの感覚がマッチしていない場合でも、「では、どのようにすればいいのか」ということが見つけやすくなるのではないかと思います。
※今回はあまり目新しいところがなく、面白みに欠ける内容になるかもしれません。
また、コブを滑っているときの物理的な事象について書いているだけなので、「こうやって滑れば上手くなる」みたいな滑りのコツを説明しているような内容ではありません。
なので、これを読んでも上達には直結しにくいような気がします。
でも、いろいろな滑り方のコツや感覚に対して「どうしてそれが効果的なのか」ということを考える際の一助になるのではないか、と個人的には思っています。
あたりまえすぎて忘れていたことの復習みたいな感じで、読んでいただければと思います。
◆スライドの滑り方と、トップからコブに乗り上げる滑り方の違い
最初に、コブの滑り方の違いによって、スキーが回転する場所とタイミングの違いから見てみましょう。
ここでは、コブの滑り方を大きく以下の2つに分けて、考えてみたいと思います。
- スライドターン
- トップからコブに乗り上げる滑り方
では、見ていきましょう。
スライドターン
まず、コブで最も一般的な滑り方であるスライドターンです。
スキーはどのように動いているでしょうか。
まず、コブの落ち込む部分を、スキーをずらしながら回し込んでいきます。
そして、コブの溝にドスンと落ちます。
コブの溝に落ちたら、そこからコブの肩(頂点)に乗り上げていく方向に進んで行きます。
このコブに乗り上げていく時に、次のターン方向へスキーが回り始めます。
つまり、前のターンの回し込みが終わり、次のターン方向へスキーが回り始める位置は、コブの溝に落ちたところになります。
トップからコブに乗り上げる滑り方
次に、スライドターンと対比する滑りとして、トップからコブに乗り上げる滑り方を見てみましょう。
トップからコブに乗り上げる滑り方は、スキーの軌道がターン孤を描く滑り方になります。
この滑り方で縦に直線的に滑る場合は、モーグルのような滑り方になります。
また、この滑り方で横方向の移動幅を大きく取ると、バンクターンになります。
これらの滑り方の共通点は、いずれもトップからコブにぶつかって乗り上げていくところで、この点がスキーを横に向けてコブにぶつかるスライドターンとは大きく異なるところです。
では、トップからコブに乗り上げる滑り方では、スキーはどのように動いていくのか、見てみましょう。
前のターンが終わり、次のターン方向へスキーが回り始める位置は、コブに乗り上げた頂点のところになります。
別の言い方をすると、ブーツがコブの出口に到達したところになります。
このように、前述のスライドターンと比較すると、「ターンが終わり、次のターン方向へスキーが回り始める位置」は異なります。
つまり、この2つの滑り方で、スキーの回転方向が転換するところは、
スライドターン = コブの溝に落ちたところ
トップからコブに乗り上げる滑り方 = コブの頂点に乗り上げたところ
になることが多くなります。
この違いは、主に体の重心とスキーの位置関係の違いによって起こります。
次からは、この「体の重心とスキーの位置関係の違い」について見ていきましょう。
◆整地での重心とスキーの位置関係
最初に、整地を滑っているときの重心とスキーの位置関係から考えてみますね。
あたりまえですが、ターンをしているとき、スキー(ブーツ)に対して重心が内側に位置しています。
つまり、体の重心は内側、スキー(ブーツ)は外側という位置関係になります。
では、ターン局面ごとに、もう少し細かく見てみましょう。
ターン後半の山回りでは、体の重心に対してスキーが斜め前に出ている状態になります。
そして、切りかえのところで、スキーが重心の真下に戻ってきて、ニュートラルの状態になります。
切りかえの後、次のターンに入ります。
重心がスキーを追い越し、ターン前半の谷回りでは重心に対してスキーが斜め後ろに位置している状態になります。
このように重心とスキーの位置関係が入れかわることによって、連続性があるスムーズなターンになります。
前後の入れかえも重要
重心とスキーの入れかえの方向は、左右の入れかえと、前後の入れかえがあります。
この左右と前後の入れかえが組み合わさって、重心とスキーの位置が斜め前や斜め後ろに入れかわります。
ここで言う「左右の入れかえ」とは、横方向に重心とスキーの位置が入れかわることです。
そもそも、この左右の入れかえができていなければ、次のターンに入ることは不可能なので、すべてのスキーヤーが行っている動作です。
また、ピボット操作で体の下でスキーをクルッと回す場合でも、ほんの少しですが必ずこの左右の入れかえがあります。
次に「前後の入れかえ」ですが、これは縦方向に重心とスキーの位置が入れかわることです。
この前後の入れかえができていなくても、多くの場合、次のターンに入ることはできるので、割とおろそかにされている部分ではないかと思います。
ただ、ターンのクォリティーを上げていったり、深いターン孤を描いていったりするためには、大切な要素になります。
では、このような「前後の位置関係の入れかえ」ができていないと、どうなるでしょうか?
前後の重心とスキーの位置関係の入れかえができていない場合、重心に対して常にスキーが前(斜面の下側)に位置していることになります。
このように重心がスキーを追い越して前に行く局面が無い滑りは、初心者に多いタイプの滑り方です。
また、中級者以上であっても、急なアイスバーンなどの難しい斜面では、切りかえの時に重心をスキーより前に移動させることを毎ターン的確に行うことは困難になります。
前後の重心とスキーの位置関係の入れかえができていないと、急斜面ではスキーを「振ってエッジング、振ってエッジング」といった感じで、エッジングがターン後半だけに集中した滑りになってしまいます。
また、緩斜面では「スキーのサイドカーブに頼った、浅いターン孤の滑り」になってしまいます。
コブでもこの前後の位置関係の入れ替えができているかどうかがキーポイントになってくるので、ここでは左右より前後の動きによりフォーカスして話していきますね。
この「整地での重心とスキーの位置関係」をふまえて、次の項からはコブではどうなっているのかを見ていきましょう。
◆コブを滑っているときの、重心とスキーの位置関係
ここでも、スライドターンと、トップからコブに乗り上げる滑り方の2つに分けて話していきますね。
スライドターン
まず、スライドターンから見ていきましよう。
1.コブの落ち込む部分でスキーをスライドさせて下っていきます。
ここでは、重心に対してスキーが斜め前、または前にある状態です。
2.コブの溝にドスンと落ちます。
ここで、スキーがフォールライン方向(下方向)へスライドして行く動きは止まります。
いっぽうで、体はフォールライン方向に進んで行く慣性が働いています。
なので、体はフォールライン方向へ進もうとします。
つまり、スキーはコブにぶつかったところで下方向にスライドしていく動きが止まりますが、体は下方向に進もうとする力が働いています。
この結果、重心とスキーの位置関係が入れかわり、重心がスキーより前になります。
また同時に、スキーは斜め横方向にも進んでいくので、重心が次のターンの内側に位置していることになります。
3.コブに乗り上げていきます。
重心がスキーより前にあり、また重心が次のターンの内側に位置しているため、コブに乗り上げていくところで、次のターン方向へスキーが回り始めます。
このような重心とスキーの入れかえにより、連続性のあるターンが可能になります。
ではここで、よくある失敗例についても見てみましょう。
まず、体の軸が内側に倒れすぎている内倒のポジションで滑っていると、どうなるでしょうか。
この場合、重心がターンの内側に行きすぎています。
こうなると、次のターンに入るときに、重心とスキーの入れかえが難しくなってしまいます。
結果的に、重心が次のターンの外側に残ったままになり、次のターンに入ることができません。
こうなると、コブのラインからコースアウトしてしまうことになります。
もうひとつ失敗例を見てみましよう。
重心がスキーより後ろ(後傾)になっていると、どうなるでしょうか。
コブにぶつかった後も重心とスキーの位置の入れかえができず、重心が後ろに残ったままになります。
この場合、スキーは次のターン方向へ回り始めずに、横方向へ直進してしまいます。
こうなると、次のターンに入れずに、コブのラインから飛び出してしまうことになります。
ただここで、横にふくらまない内側のラインを滑っている場合は、フォールライン方向へ進んで行く慣性が強くなります。
また、横の移動幅が小さいため、横方向へ進む慣性は弱くなります。
この場合は、横方向へ進む力よりもフォールライン方向へ進んで行く力のほうが強くなるので、重心がスキーより後ろになっていても、ラインを外れずに次のターンに入ることができます。
ただこれだと、次のターンのコブの落ち込む部分で十分に荷重できないため、ずらして減速することが難しくなります。
そうなると、次のコブの受けている部分にスキーのソールをぶつけて減速する感じになり、安定性に欠けた滑り方になってしまいます。
ここではやっぱり、重心がスキーより前(重心が次のターンの内側)になることが大切になります。
ただ、実際これは頭ではわかっていても、なかなか思うようにはいきません。
「次のコブにぶつかったら、どのくらいの圧を受けて、どのくらい重心が前に戻されるか」ということを予測できるようになるには、ある程度の経験が必要になります。
ここで、不用意に重心を前にもっていきすぎてしまうと、コブにぶつかった時に上体が前につぶされてしまい、バランスを崩してしまいます。
かと言って、重心を前にもっていくことをためらってしまうと、コブにぶつかった時に後傾になり、コブのラインからはじき出されてしまいます。
コブにぶつかったときにどのくらいの圧を受けて、その圧に対してどのくらいの力加減で対応すればいいのか、または重心をどのくらいの位置にしてコブにぶつかれば、コブにぶつかった後にスキーと重心の位置関係が適切になるのか、これらの点については、コブをたくさん滑って、その感覚をやしなっていく必要があります。
トップからコブに乗り上げる滑り方
ここからは、トップからコブに乗り上げていく滑り方について見てみましょう。
1.コブにぶつかるところです。
ここでは、体の重心がターン内側にあり、スキー(ブーツ)が外側にあります。
また、前後の位置関係としては、重心が少し後ろ、スキー(ブーツ)が少し前になります。
これは、コブにぶつかった衝撃で重心が前に戻されることをあらかじめ想定し、それを考慮に入れた重心の位置になります。
2.コブに乗り上げていくところでは、外側にあったスキーが内側に向かい、重心とスキーの位置が近づいていきます。
3.ブーツがコブの頂点に乗り上げたところで、体の下にスキーが引き戻されます。
このコブの頂点に乗り上げたところは、整地で言うところのニュートラルポジションに該当します。
4.コブの頂点を越えていくところで、体の重心がスキーを追い越します。
つまり、重心が前、スキーが後ろという位置関係になります。
5.コブの落ち込んでいる所に入ります。
ここは、整地のターンではターン前半の谷回りに該当するところです。
なので、体の重心からスキーが外側に離れていきます。
整地の場合は谷回りでスキーに対して重心が谷側に位置していますが、コブでは次のコブにぶつかるときに衝撃を受けるので、重心がスキーより谷側に行く量は少なくなることが多いです。(これはコブの深さ、スピード、ラインどり等によって変わってきます)
最初のコブにぶつかるところに戻り、以後くりかえしになります。
スキーと重心の入れかえの重要度は、滑るラインによって変わる
重心がスキーを追い越して前に行く局面をつくることができるかどうかについては、滑るラインによってその重要度が変わってきます。
バンクターンのように横の移動幅を大きく取ったラインどりで滑るには、ほとんどの場合、ターンの切りかえで重心がスキーより谷側になるようにすることが必須になります。
ここで、重心がスキーを追い越して谷側になる局面をつくれないと、次のターンに入れずにコースアウトしてしまいます。
いっぽう、モーグルのように縦のラインどりでスピードを出して滑る場合は、重心がスキーを追い越して谷側になることの重要性は低くなります。
これは、縦のラインどりでは、下(フォールライン)方向へ進む慣性が大きくなり、いっぽうで横方向へ進む慣性は小さくなるからです。
そのため、重心がスキーを追い越していなくても次のターンに入ることができてしまいます。
ただ、このような縦のラインどりであっても、毎ターンごとに重心がスキーを追い越して谷側にいく局面をつくることが理想的です。
重心がスキーを追い越して前にいく滑りは、切りかえ直後に
一瞬「クッ」と重心が前に入るところがあって、見ていて心地良い滑りになります。
また、コブの落ち込む部分でも的確に接雪できるので、よりコントロール性の高い滑りになります。
その反対に、重心がスキーを追い越していく局面が無い滑りは、コブの落ち込む部分で十分に接雪できず、コブの受けている部分にドスンとぶつかる感じになります。
そのため、滑りの快感度は低くなります。
また、コブから衝撃をもらってしまっているように見えてしまい、見栄え的にも良くありません。
横の移動幅をとったスライドターン
ここまでで、「スライドターン」と「トップからコブに乗り上げる滑り方」という2つの滑り方の、重心の位置とスキーの回転方向の関係を見てきました。
この2つの滑り方では、スキーが次のターン方向へ回り始めるタイミングに違いがあることがおわかりいただけたと思います。
でも、スキーが回り始めるタイミングが、この2つの滑り方の中間くらいになる滑り方もあります。
それは、横の移動幅を大きくとってスライドターンをする場合です。
ここからは、この滑り方について見ていきますね。
1.コブの落ち込む部分で、スキーをターン外側にスライドさせていきます。
このとき、重心に対してスキーは外側前方へ離れていきます。
2.スキーがコブの溝に落ち、コブにぶつかります。
ここで、左右の動きとしては、スキーが外側に向かっていく動きは止まり、内側に進み始めます。
また、前後の動きでは、斜面下側にずれていくスキーの動きが止まり、いっぽうで体は斜面下側へ向かう慣性が働いています。
そのため、斜め前方外側に向かっていたスキーが、体の下に戻ってくる方向に方向転換します。
3.コブに乗り上げていきます。
この溝の底からコブの頂点までの間で、スキーが体の真下に入り、そこから重心とスキーの位置の入れかえ(クロスオーバー)が起こります。
重心とスキーの位置が入れかわったところで、次のターン方向へスキーが回り始めます。
この重心とスキーの位置が入れかわるタイミングが早すぎて、コブの溝に落ちた直後すぐに入れかわってしまうと、次のターンで重心が内側に入りすぎた状態になってしまいます。
反対に、重心とスキーの位置の入れかえが遅れてしまい、コブの頂点に乗り上げるまでにできていないと、重心がスキーを追い越すことができないことになってしまいます。
こうなると、次のターンに入れずに、コブのラインからはじき出されてしまうことが多くなります。
このような状態で次のターンに入るには、テールを上に引き上げて振るようなリカバリー動作が必要になってきます。
◆重心の入れ替えができていない場合
ここまでで、コブの滑り方の違いによる重心とスキーの位置関係の入れかえについて考えてきました。
もし、この重心とスキーの位置関係の入れかかえができていないと、どうなるでしょうか?
この場合、体の重心に対して、常にスキーが斜面の下(フォールライン方向)に位置している滑り方になります。
これを低速で行うとズルドンになり、スピードが出ている場合はヒールキックでコブを蹴とばしていく滑り方になります。
では、この2つの滑り方を見ていきましょう。
ズルドン
1.スキーをクルッと横に回し、コブの落ち込む部分をずらしていきます。
このとき、体の重心は後ろ、スキーは前という位置関係になります。
2.コブの溝に落ちます。
ここで、スキーがフォールライン方向にずれていく動きは止まります。
いっぽうで、体が下方向へ向かっていく慣性が働いているので、重心とスキーの位置が近づいていきます。
このように重心とスキーの位置は近づいていきますが、重心がスキーを追い越すところまではいきません。
3.コブの頂点に乗り上げます。
重心がスキーを追い越すことはなくても、フォールライン方向へ落ちていく慣性が働いているため、コブの頂点に乗り上げたところで、スキーをクルッと回すことができます。
ただ、重心がスキーよりも後ろにあるので、先落としはできません。
そのため、スキーのトップを上下に操る3次元的な動きはできずに、スキーを横にクルッと回すだけの2次元的(平面的)な動きにとどまります。
スキーを横に振ったら、コブの落ち込むところに入り、以後最初の1からのくりかえしになります。
ヒールキックでコブを蹴とばしていく滑り方
では、ここからはもっとスピードを出した滑り方になる「ヒールキックでコブを蹴とばしていく滑り方」を見ていきましょう。
ヒールキックは、スピードオーバーになってしまったり、コブに飛ばされて後傾になってしまったりした場合のリカバリー方法として有効です。
ただ、リカバリー方法としてではなく、このヒールキックをメインにしてコブを滑っているスキーヤーもいます。
モーグル初級者はこのヒールキックだけで斜面の上から下まで通して滑っていることがあります。
また、残雪期のザブザブした雪のときによく見かける滑り方です。
1.直線的にスピードを出して、コブの落ち込む部分を下っていきます。
コブにぶつかるときに受ける大きな衝撃をあらかじめ予測し、体の重心は後ろ、スキーは前という後傾気味の体勢で衝撃に備えます。
2.コブの受けている部分にドスンとぶつかります。
このとき、エッジを立てている感覚はなく、平面的にソールでコブを蹴とばすような感じになります。
コブにぶつかった衝撃で、重心とスキーの位置は近づきますが、重心がスキーを追い越すところまではいきません。
3.コブの頂点を乗り超えていきます。
重心がスキーを追い越していないので、先落としはほとんどできません。
仮に先落としをしたとしても、重心が後ろにあるポジションでコブにぶつかるため、スキーをたわませて衝撃を吸収することはできません。
そのため、先落としによる恩恵はあまり受けることができません。
4.コブの落ち込む部分では接雪せずに、空中に浮いている状態になります。
「コブにドスンとぶつかって→宙に浮く、コブにドスンとぶつかって→宙に浮く」という感じのくりかえしになります。
◆上の段階につながりにくい滑り方
上記の、ズルドンとヒールキックの2つは、次の段階の滑りに発展しにくい滑り方と言えます。
この2つの滑り方は、たくさん練習しても、そこから先の上達にはなかなかつながっていきにくいのではないかと思います。
なぜでしょうか?
それは、体の重心とスキーの位置のいれかえが無いことと関係しているのではないかと思います。
この、「体の重心とスキーの位置のいれかえが無いこと」により、いろいろと不都合がでてきてしまうのですが、これらについて見ていきましょう。
ズルドンの欠点
ズルドンはコブ初心者の多くが行っている滑り方になります。
そのため、ズルドンの滑り方をしている多くのスキーヤーは、しっかりと減速して滑りたいと考えています。
ただここで、減速しようとする意識が強すぎると、これがかえって失敗の原因になってしまいます。
まず、ズルドンのラインどりを見てみましょう。
コブの内側を削って減速するので、横の移動幅がほとんどない、縦のラインどりになります。
横への移動がないため、コブにぶつかった時に横に向かう慣性より、下(フォールライン方向)に向かう慣性の方が強くなります。
横より下に向かう慣性が強いため、体の重心とスキーの位置のいれかえが無くても次のターンに入ることができます。
ただここで、コブにぶつかったところで止まってしまうぐらいまで減速してしまうと、下(フォールライン方向)へ向かう慣性がほとんどなくなってしまいます。
いっぽうで、コブの溝は斜め内側に傾斜しているので、スキーが溝に沿って横方向へ向かっていく力が働きます。
ここで減速しすぎて、下に向かう力より横に向かう力が強くなってしまうと、スキーは溝に沿って横に進んでしまい、次のターンに入ることができなくなってしまいます。
つまり、しっかりとコントロールして滑ろうとして減速しているのに、減速しすぎてしまうと、かえって失敗してしまうという結果になってしまいます。
ズルドンのもう1つの欠点としては、横の移動幅をとった滑り方に発展しにくいということが挙げられます。
ズルドンで安定して滑ることができるようになったら、次の段階として、スキーを斜め外側にずらしていって、横方向の移動幅をとったターンにしていくといいのではないかと思います。
(横方向の移動幅をとったターンの詳細はこちらのページをご参照ください)
ズルドンで滑っているときは、横方向の移動幅がほとんど無いため、スキーが横方向へ進む力は少ししか生じません。
つまり、横へ進む慣性より、下(フォールライン)へ進む慣性の方が大きくなります。
そのため、常に体よりスキーが前(フォールライン方向)にある状態でも、コブを通して滑ることが可能です。
いっぽう、横の移動幅をとった滑り方になると、横方向へ進む慣性が大きくなってきます。
ここで、ズルドンのときと同じように常に体よりスキーが前(フォールライン方向)にあるポジションだと、下(フォールライン)へ向かう慣性より、横へ進む慣性が大きくなってしまいます。
すると、スキーは横方向へ進んでしまい、次のターンに入れなくなってしまいます。
また、横方向に進むスキーを強引にひねって次のターン方向に回していこうとすると、テールが後ろの斜面にひっかかってしまったり、体がローテションしてしまったりなど、いろいろな弊害が出てきてしまいます。
ここで、最初のところで話してきたように重心とスキーの位置の入れかえができていれば、スキーは自然に回ってくれるようになり、次のターンに簡単に入ることができるようになります。
このように、ズルドンの滑り方であれば重心がある程度後ろに位置していても滑れてしまいますが、そのポジションで横の移動幅をとった滑り方をしようとすると、スキーと重心の入れかえができなくなり、コブを通して滑ることが難しくなってしまいます。
ヒールキックでコブを蹴とばしていく滑り方の欠点
コブの落ち込む部分ではほとんど接雪せずに、コブの受けている部分にドンッと強い衝撃でぶつかる滑り方になります。
コブにぶつかる一瞬の強い衝撃に耐えるため、重心よりスキーが前に出たポジションになります。
この滑り方だとスキーのたわみによるショックアブソーバーが使えないので、毎ターンごとコブから受ける強い衝撃に耐えていく必要があり、体力の消耗が非常に激しい滑り方になります。
また、スキーがあまり滑らない春のグサグサ雪ならこの滑り方でもなんとかなりますが、冬のハイシーズンの堅いコブだとスキーが前にすっぽ抜けてしまい、すぐに発射してしまいます。
なので、春限定の滑り方と言えるのかもしれません。
コブに飛ばされないように重心を前の方にして滑ると、今度はコブの衝撃につぶされてしまうことが多くなり、なかなか重心を前にしていくことができません。
そのため、重心とスキーの位置関係の入れかえが起こらなくなり、上の段階の滑りにつながりにくくなってしまいます。
ズルドンやヒールキックで滑っていては上達しないのかと言うと、もちろんそんなことはありません。
ズルドンやヒールキックで滑っているときでも、いろいろとコブを滑る際の視覚情報や感覚が蓄積されていくのではないかと思います。
ただ、その練習をくりかえして、その精度を上げていくだけでは、あるところで上達が頭打ちになってしまいます。
また、ズルドンやヒールキックは「後傾気味のポジションでもコブを通して滑れてしまう」ということも、厄介なところかもしれません。
なぜかと言うと、その滑り方をずっと繰り返していくことで、悪いポジションが体にしみついてしまう恐れがあるからです。
いつもズルドンで滑っている場合はラインどりを変えてみる、また、ヒールキック一辺倒で滑っている場合は、もっとスピードを落としてトップからターンを始動する滑り方をしてみたり、あと、バンクターンをしてみたりするのもお勧めです。
このような練習をしていくことで、スキーと重心の位置の入れかえが起こり、自動的にスキーがターンしていくようになります。
こうなると、ちょっと大げさな言い方かもしれませんが、コブの新たな世界が開けてくるのではないかと思います。
おわり
◆目次はこちら
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- HOME -
コブの滑り方
■ 脚は少し曲げておく
■ 目線は重要
■ かかと加重を重視
■ スタンスと前後差
■ 基礎スキーヤーがモーグル的に滑るには
■ 吸収動作を長くキープ
■ モーグルのストックワーク (1)
■ モーグルのストックワーク (2)
■ モーグルのストックワーク (3)
■ スイッチバック
■ 背筋を伸ばす
■ 秘技!! スライド&ジャンプ
■ 吸収動作が必要なわけ
■ 吸収動作によるスピードアップ
■ 1つの動作で吸収と先落としをする
■ 吸収はヒザを意識する
■ 吸収動作による前後のバランスの調整
■ 吸収を行わない滑り方
■ 肩の逆ローテーション
■ ダブルストック
■ 縦の溝コブで減速
■ コブの溝でスキーをたわませる
■スキーの先落としと関節の動き
■吸収と伸ばしのタイミング
■ 足首の角度とポジションの関係
■ 左右非対称のコブとスライド
■ レベルによるストックワークの違い
■ スキーの先落しの角度とスピードコントロール
■ 静かなストックワーク
■ ボール状の凹みを通るライン
■ 外側の肩を下げる動きについて
■ スキーの縦の動きと練習について
■ コブ初心者 (1) どこを通る?
■ コブ初心者 (2) フォールライン方向にずらす
■ コブ初心者 (3) 上体をフォールライン方向にキープ
■ コブ初心者 (4) 脚のかまえ
■ コブ初心者 (5) それではコブを滑ってみよう・前編
■ コブ初心者 (6) それではコブを滑ってみよう・後編
■ コブ初心者 (7) スキー板と練習するコブ斜面
■ 春の巨大コブを省エネで滑る方法
■ 滑り方によって変化する谷回りと山回り
■ コブ中級者への道 (1) プロペラと逆ひねり
■ コブでおじぎを防ぐには
■ コブ中級者への道 (2) スライドする方向を変える
■ コブ中級者への道 (3) コブでスキーが開いちゃう
■ 上体を前に移動させる
■ コブ頂点のポジション
■ 基本ポジション
■ コブの滑り方で変わる前傾角度
■ 腰と下っ腹の意識
■ 先落としにトライしてみよう Part 1
■ 先落としにトライしてみよう Part 2
■ コブの衝撃に強いポジション Part 1
■ コブの衝撃に強いポジション Part 2
■ 腕の構え
■ コブで動きを止めない滑り Part1
■ コブで動きを止めない滑り Part2
■ ストックワークと腕の動き
■ コブに乗り上げていくところの脚の動き
■ コブを片足で滑ってみる
■ 重心とスキーの回転
■ パウダーとコブの共通点 Part 1
■ パウダーとコブの共通点 Part 2
■ スキーのたわみでコブから受ける衝撃をやわらげる
■ 負の連鎖 Part 1
■ 負の連鎖 Part 2
■ 負の連鎖 Part 3
■ 負の連鎖 Part 4
■ テールジャンプ Part 1
■ テールジャンプ Part 2
■ テールジャンプ Part 3
■ 目線は重要
■ かかと加重を重視
■ スタンスと前後差
■ 基礎スキーヤーがモーグル的に滑るには
■ 吸収動作を長くキープ
■ モーグルのストックワーク (1)
■ モーグルのストックワーク (2)
■ モーグルのストックワーク (3)
■ スイッチバック
■ 背筋を伸ばす
■ 秘技!! スライド&ジャンプ
■ 吸収動作が必要なわけ
■ 吸収動作によるスピードアップ
■ 1つの動作で吸収と先落としをする
■ 吸収はヒザを意識する
■ 吸収動作による前後のバランスの調整
■ 吸収を行わない滑り方
■ 肩の逆ローテーション
■ ダブルストック
■ 縦の溝コブで減速
■ コブの溝でスキーをたわませる
■スキーの先落としと関節の動き
■吸収と伸ばしのタイミング
■ 足首の角度とポジションの関係
■ 左右非対称のコブとスライド
■ レベルによるストックワークの違い
■ スキーの先落しの角度とスピードコントロール
■ 静かなストックワーク
■ ボール状の凹みを通るライン
■ 外側の肩を下げる動きについて
■ スキーの縦の動きと練習について
■ コブ初心者 (1) どこを通る?
■ コブ初心者 (2) フォールライン方向にずらす
■ コブ初心者 (3) 上体をフォールライン方向にキープ
■ コブ初心者 (4) 脚のかまえ
■ コブ初心者 (5) それではコブを滑ってみよう・前編
■ コブ初心者 (6) それではコブを滑ってみよう・後編
■ コブ初心者 (7) スキー板と練習するコブ斜面
■ 春の巨大コブを省エネで滑る方法
■ 滑り方によって変化する谷回りと山回り
■ コブ中級者への道 (1) プロペラと逆ひねり
■ コブでおじぎを防ぐには
■ コブ中級者への道 (2) スライドする方向を変える
■ コブ中級者への道 (3) コブでスキーが開いちゃう
■ 上体を前に移動させる
■ コブ頂点のポジション
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■ 先落としにトライしてみよう Part 1
■ 先落としにトライしてみよう Part 2
■ コブの衝撃に強いポジション Part 1
■ コブの衝撃に強いポジション Part 2
■ 腕の構え
■ コブで動きを止めない滑り Part1
■ コブで動きを止めない滑り Part2
■ ストックワークと腕の動き
■ コブに乗り上げていくところの脚の動き
■ コブを片足で滑ってみる
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■ パウダーとコブの共通点 Part 1
■ パウダーとコブの共通点 Part 2
■ スキーのたわみでコブから受ける衝撃をやわらげる
■ 負の連鎖 Part 1
■ 負の連鎖 Part 2
■ 負の連鎖 Part 3
■ 負の連鎖 Part 4
■ テールジャンプ Part 1
■ テールジャンプ Part 2
■ テールジャンプ Part 3
リフトの上で考えたこと
■ 最後の1本
■ スキー場の混雑を回避しよう
■ 今後のコブ斜面のトレンド
■ コブの滑り方はコブ斜面が教えてくれる
■ スキーはポジションしだいで大化けできる
■ シーズン別、積雪と雪質について
■ アフタースキー
■ スキーの動画撮影をしよう
■ 整地での練習の重要性
■ 日帰りで行くスキー場
■ スキーとお金について
■ スキー初すべりで考えること
■ コブを教えること。コブを教わること。
■ スキー場の混雑を回避しよう
■ 今後のコブ斜面のトレンド
■ コブの滑り方はコブ斜面が教えてくれる
■ スキーはポジションしだいで大化けできる
■ シーズン別、積雪と雪質について
■ アフタースキー
■ スキーの動画撮影をしよう
■ 整地での練習の重要性
■ 日帰りで行くスキー場
■ スキーとお金について
■ スキー初すべりで考えること
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■ モーグルに適したブーツ
■ モーグルに適したブーツ #2
■ モーグル用の板は必要か?
■ モーグルのグローブの選び方
■ 自転車ロードバイクに学ぶ道具学
■ ヘルメット
■ 極太ファットスキー
■ オーダーメイド インソール その1
■ オーダーメイド インソール その2
■ 硬いモーグル用スキー板と柔らかいモーグル用スキー板
■ オーダーメイド インソール 2代目
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